新緑の中を吹く風に問うたもの・・・・・・。

とにかく、自然に作られた映画です。
五年半勤めた熊本の大学を辞めたのが、’07年の3月。’08年の11月には若いスタッフの前でこの企画について口にし、協力を依頼している。一年半の空白の後、又ゾロ、講義でもしたくなったかと思われると恥ずかしいが、そう云う気持ちがゼロではなかったにしろ、私は在学中にやっておきたいと思い、結局面倒臭くって止めてしまった“講義録”を残しておきたいと思っていたのだ。
私が教えていたのは勿論、基本的には映画・映像だが、そこからはみ出したものが随分多かった。と云うよりも、表現の基本、その欲求の根元になるようなものを、自分の個人的な体験を交えて話すことが多かった。その講義録を、映像でやってしまえと、思ったのである。
そうすると極く自然に玉川上水添いの散歩道という“場所”に結びついた。
私はかれこれ40年近く、井の頭線久我山駅近くに住んでおり、今は世田谷区だが玉川上水には今迄で一番近い。この場所に住んで既に20年になる。今回歩いた井の頭公園へ至る道は、片道一時間半はかかるから、そんなにしょっちゅう歩くわけではないが・・・・・歩く度に、自然と人間(人工物)との“童話的”とでも呼ぶしかない、不思議な絡み合いを感じる場所だ。
ところで皆さんは、例えば自分の立っている“時代”と言ったものを、どのように感じていますか?堅固で、リアリティの有するものとして感じていますか?
私には近年、それがドンドン溶解して行っているように思えてならないのです。その時−我々と云う不思議な生物(自然)は何をとっかかりにして生存して行けば良いのか・・・・新緑の中を吹き渡る風の中に、そのような問いを発したのです。

沖島勲